視覚詩「ロク」こひもともひこ

同じ升目の中で
育てられる平等な
青さにいらついてら
ならでりゃいいじゃん
つっても出てこないお前
は誰かにフタを開けて
もらえる事をひたす

待っている、
      ボルトがオスで
     ナットがメスか、
    ボルトがメスで
   ナットがオスか、
  どちらにしろ
 お前が動かないのなら用なしだ

 青い六角が集まり蛇腹、
  蛇腹というと蛇か、
   ということはアオダイショウか、
    青大将はさほど青くない、
     なら尾の青いカナヘビか、
      仮名が重いのか、
     いや、尾が青いのはトカゲだ、
    蜥蜴は蛇腹か、
   と影は青か、
  ――ブルーにこんがらがったまま
 もたげた首は、
どこまで伸びる、

 首をもたげて舌を出す
  二又に分れたどっちに行けばいい
   二股に別れたどっちに逝けばいい
    饒舌なおまえには嘘しかなく
     寡黙なおまえは言葉を知らず
      あいつよりはましだと思っている

       同じ形の升目の中で隣に進む選択肢は
        六角形だと六通りあり
         四角形だと八通りある
          「斜めは反則じゃないか!」
           将棋もチェスも反則ではない
            己の進み方は自分で決められる

 安定した形状?
 アーチは円になり
蜂の巣は六角形になり
無重力下では球体になり
 そして誰かの引力により
 常にゆがみが発生する

         六角形の頂点から引く直線を使い
        ニ等分しても二つの三角形にはならない
       引けるだけ直線を引くといくつの三角形ができるか
      すぐには答えられない
     わかったつもりになっている物事のほとんどを
    我々は知らない

  整然と並んだ六角形のその複眼で
 昆虫は物事をどう捉えているのだろうか?

二つの目という共通項がある哺乳類も
位置が変われば見方も変わり、色の識別には個人差があり

 自分の見ている景色が
  世界を正確にあらわしているわけではない

      まるとまる
     を圧縮、すると
    六角になる。岩がく
   ずれ水に流されると丸く
    なる。我々は、隣人
     と関係しあい、
      人として、
           正しい姿勢を探さねばならない。



イラスト:サトウアツコ

視覚詩「ロク」こひもともひこ

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