楽紙8「トナカイの木」

2018年10月29日から11月7日にかけツイッターにて、タグ #楽詩 を使い、サトウアツコさんのイラストにぴったりの詩歌やショートストーリーをつけるイベントを行いました。ツリーのテンプレートを使うか、または自由というお題で、そのときの投稿作品です。トナカイが頭だけ大きかったり、不思議な男の子が木の上にいたり、さみしそうな雪だるまがいたり……一見変わったモチーフの絵に、みなさんうまく作品をつなげました。ツリーはなんと、5本も立ちました!

フリーペーパー版は、ツリー詩は二つひと組でツリーの形で掲載されています。(豊増美晴)

トナカイの木

地球上の赤と緑が

愛らしいマントになって

ふわふわと散歩する師走

寒がりの星々が我れ先に

暖かなともしびを纏おうとする

息が白く透けて

だから冬は淋しい

だけど冬は優しい

今年も隣にいるきみは

トナカイみたいな優しい目

重ね合う掌の上産まれたてみたいに強く煌めく何か

(衣未)

降り

積もる

雪の願いは

遠くへ

想い募る

きよしこの夜

交差する星の軌跡

重なり合う今宵の奇跡

見守っているよ

心配しないで君を

一人にはさせないから

ずっと一人にはさせないから

白く溶かしてあげる君の青粒の涙

もう震えなくていいんだよ

大丈夫

大丈夫

だから

(流歩詩)

訪れ

鈴の音

待ちぼうけ

木々の

隙間には

風の子が眠る

乾いた手のひらを

ひらいた指と指の間を

すれ違う季節が

擦り傷を作ろうと

鋭い柊の葉に赤い実は

守られて夢の随に輝きを灯す

衣擦れに耳をそばだてて眠る夜に

風吹けば葉擦れの音と足音

しゃら

しゃら

しゃら

(杜 琴乃)

1  と  2  の月

ひとり  と  ふたり  のもの

ツリー  と  トナカイ  は眠り

ヒイラギの  葉  と  実  は踊る

青い星  は  喧嘩をして

赤いハート  は  愛を育む

雪だるま  は  ひとりぼっち

冷えた  心  と  体  は

温まらずに  溶けて  なくなる

(イリト)

輝く

この夜

聖樹の下に

私たち

あつまり

高なる鼓動と

しずかなる祈り

憧れの香りが満ちて

贈り物はなに?

ささやきかわす声

天使の歌が聞こえたら

トナカイの足音も追いかける

ヒイラギの赤い実に想いをのせて

今こそ喜びの日喜びのとき

ゆきも

大地も

祝うよ

(とがし ゆみこ)

もみ

木に従

ちとちがう

もみ樅

人人が木

を樅樅しモク

シャル貼らす面と

貼らさない面とがあり

木もちよくなり

木もちわるくなり

片側だけ囃し立てては

いけませんよと木に従う手手

飾りつけましょうきらびやかに樅

知恵の樹でもありますから

人グル

人グル

モミ従

(こひもともひこ)

針葉樹と呼ばれます

足から根が伸びてひろがり

知らぬ人や遠い国の冬と絡まる

棘を含んだぬくもり

ひとつひとつが雪だ

最大電力を両腕に託す

街のイルミネーションと

総合病院のそれは、それは

閉じる瞳を柔らかく包みたい

欠片の印よ、星を放て

(天野しえら)

あのこは鼻を撫でてくれました

歌とおなじだ、柊の実みたいと

転がるように驚いて

それからちょっぴりほほえんで

青い瞳は夜に輝いた。

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孤独な王様が命じた。

「クリスマスには街路樹に飾りをつけなさい」

町の人々はどんな風に木を飾ればよいのか分からなかったけど、なんとなく素敵でヘンテコな命令だったので、ヘンテコな飾りつけをした

お肉屋さんは木にお肉をぶら下げたり、魚屋さんは魚をぶらさげたり

町長さんの奥さんは素敵な洋服とてっぺんにはベレー帽をのせたり

町長さんはお金を飾りました

女の子はサンタさんを思い浮かべました

わたしのところに最初にきてほしいから、てっぺんには大きな星をくっつけよう。

小さな星々も木にゆっくり流れる川や雲

そして所々にいろんな色した星をぶらさげよう

サンタさんはきっとそんな景色を見てる

女の子はそう信じて眠りましたとさ。

オシマイ

参考

「アメリカ合衆国初代皇帝ノートン1世」よりの勅命

クリスマスには街路樹に飾りつけるべし

(たこすけ)

永遠

暑くて

終わらない

と私は

信じてた

でも終わるの

金木犀の花が香り

未来を感じさせていて

どこもかしこも

冬になっていくね

家具屋やテーマパーク

の広告がクリスマスっぽくて

私は何年か前の聖夜のひとときを

ぼんやり想い出していたわ

今年の

終わり

と未来

(深田水松)

独り

佇んだ

雪だるまを

少年は

憐れんだ

嗚呼、嗚呼

かわいそうだね

とてもかわいそうだ

ここにはもう

だれもいなくて

君はいつからここで

ひとりぼっちでいたのかな

「もう、大丈夫。寂しくないよ

これからは僕がいるから」

優しい

あの子

は星に

(葉月兎來)

の子

願いの

旅路は遠く

再会の

約束の日

いつ訪れるか

知らぬまま今宵も

蘇るモミの木の思い出

また会おうねと

並んで笑い唱えた

ハートとホシの魔法は

大人になった2人が忘れても

トナカイと雪だるま一緒になって

忘れずに口ずさんでいる

天使だ

った頃

の記憶

(流歩詩)

煌く

この宵

聖夜を前に

君たち

かけだし

温かな料理と

おてせいの飾り

パーティーが始まり

主役はだあれ?

慌ただしく支度し

聖者のソリが走ったら

子供はそろそろおねむの時間

いつも通りの赤い服を風に翻して

今こそ喜びの日喜びのとき

今年も

必ずや

行くよ

※昊:(読み)そら

(蟻男)

二の

サンタ

クロースは

満杯の

橇を引く

夢を詰め込み

防水処理を施して

来たる日に備えている

ホントは雪の精

ホントは雪だるま

心も体もシンメトリー

結晶が天からの贈り物ならば

撒いて散らして行方に滑らせては

夜と希望の文字を代えるのさ

わっせ

ほいせ

聖し道

(天野行雄)

言葉の裏には

本当の愛があるらしい

その場所は

誰も知らない

二人の愛を

秤にかけてはならない

少しの風で

愛の秤は

どちらかに傾く

言葉の裏を

歩いているのだが

気付かない

それでいいのだ

一枚捲ると

二枚三枚と捲りたくなる

どこかで

危険な匂いに出くわす

そんな冒険は

してはならない

(木村孝夫)

楽紙8「トナカイの木」

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