【Atsusuke × Miika】詩:田中宏輔(あつすけ) イラスト:黒沙鐶(くろさわ)ミイカ


少年は待っていた。
雨が降っていた。

少年は待っていた。
雨が降っていた。

少年は待っていた。
雨が降っていた。

少年は待っていた。
男は来なかった。

少年は待っていた。
男は来なかった。

少年は待っていた。
男は来なかった。

いつまで待っても
男は来なかった。

いつまで待っても
男は来なかった。

雨と雨粒、
睫毛に触れて、

少年のように
雨が降っていた。

少年のように
雨が待っていた。

(「陽の埋葬」より)

 

Narcissus『水仙』 黒沙鐶ミイカ

Narcissus『水仙』 黒沙鐶ミイカ

 

きょうは、大宮公園に行って、もう一度、さいしょのページから、ジョン・ダンの詩集を読んでいた。公園で詩集を読むのは、ひさしぶりだった。一時間ほど、ページを繰っては、本を閉じ、またページを開いたりしていた。帰ろうと思って、詩集をリュックにしまい、さて、立ちあがろうかなと思って腰を浮かせかけたら、2才か3才だろうか、男の子が一人、小枝を手にもって一羽の鳩を追いかけている姿を目にしたのだった。ぼくは、浮かしかけた腰をもう一度、ベンチのうえに落として坐り直して、背中にしょったリュックを横に置いた。男の子の後ろには、その男の子のお母さんらしきひとがいて、その男の子が、段差のあるところに足を踏み入れかけたときに、そっと、その男の子の手に握られた小枝を抜き取って、その男の子の目が見えないところに投げ捨てたのだけれど、するとその男の子が大声で泣き出したのだが、泣きながら、その男の子は道に落ちていた一枚の枯れ葉に近づき、それを手に取り、まるでそれがさきほど取り上げられた小枝かどうか思案しているかのような表情を浮かべて泣きやんで眺めていたのだけれど、一瞬か二瞬のことだった。その男の子はその枯れ葉を自分の目の前の道に捨てて、ふたたび大声で泣き出したのであった。すると、あとからやってきた父親らしきひとが、その男の子の身体を抱き上げて、母親らしきひとといっしょに立ち去っていったのであった。なんでもない光景だけれど、ぼくの目は、この光景を、一生、忘れることができないと思った。

(「詩の日めくり」所収「二〇一四年八月二十七日『詩と人生』」より)

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